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「正しい」工務店ほど、なぜ売れなくなったのか

  • 執筆者の写真: プレイン 北脇
    プレイン 北脇
  • 11月12日
  • 読了時間: 3分

Ⅰ.「正しさ」が武器だった時代


少し前まで、真面目な工務店ほど強かった。派手なデザインより、誠実な性能。過剰な装飾より、自然素材の心地よさ。「正しく」「丁寧に」「まじめに」。

その姿勢は、マス層、特に公務員や医療・教育関係者など、“アッパーマス=安定層”の価値観と強く共鳴していた。

「性能と素材の良さを理解してくれるお客様」「家づくりの意味を共有できるご家族」


――そんな理想の顧客像を信じて、数十年、誠実な家づくりを積み重ねてきた。

 

Ⅱ.構造が変わった。なのに、やり方は変わらなかった。


コロナ以降、世界の構造が変わった。建築費は1.5倍。ローン金利は上昇傾向。生活コストも上がった。

にもかかわらず、多くの真面目な工務店は“同じお客様像”を追い続けた。

それが、いまの苦戦の本質だ。

アッパーマスは、もう「誠実で丁寧な家」を買える層ではなくなった。

にもかかわらず、彼らに向けた「説明」「説得」「共感マーケティング」を続けている。

構造が変わったのに、思考様式が変わっていない。まさしく、「没落すべくして没落している」。

 

Ⅲ.“高いのに、貧乏くさい”という悲劇


自然素材、高性能、真面目、丁寧。どれも素晴らしい価値だ。だが、価格が5,000万を超える時代において、このトーンのままでは、「真面目」ではなく「地味」にしか見えない。

高いものを売っているのに、説教くさい。高いものを売っているのに、貧乏くさい。

これが、多くの自然素材・高性能系ブランドの現状だ。

つまり、“言っていることは正しいが、買いたくならない”。

消費者はもう、「正しさ」では動かない。情報の海で生きてきた彼らは、“正しすぎるものほど、つまらない”と感じている。

 

Ⅳ.「正しさ」ではなく、「気分」が価値になる時代


富裕層は、もはや“論理”で買わない。オーガニック、自然素材、ZEH、耐震等級――そうした言葉は、理解しているが、求めていない。

彼らが求めているのは、*「気分」や「余白」や「体験」*だ。

・機能性の説明より、空気感。・断熱性能より、窓の向こうの景色。・素材の産地より、時間の豊かさ。

「理屈の正しさ」よりも「心の納得」。

だからこそ、「まじめなだけのブランド」は、ラグジュアリーの言語圏から外れてしまった。

 

Ⅴ.かつての“共感”が、今は“疲労”を生む


今のアッパーマス層は、情報疲れしている。正論にも、SDGsにも、脱炭素にも、性能にも、もう“お腹いっぱい”だ。

(特にトランプ以降、世界的なゲームチェンジに突入し、単なるリベラル的綺麗事を掲げることは企業にとって、むしろアゲインスト・マイナス要因になっている)

 

そんな彼らに、「自然素材がいいですよ」「この性能が大事なんです」「本当に暮らしを考えるなら…」

――というメッセージは、もう「うるさい」としか感じられない。

つまり、かつての“共感の言葉”が、今では“説教の言葉”になっている。

 

Ⅵ.「誠実さ」を残して、「まじめさ」を脱ぐ


求められているのは、“まじめ”の否定ではない。

「誠実さ」を残しながら、「まじめさ」を脱ぐ勇気。

「正しいことを言う」から、「気持ちのいい体験をつくる」へ。

「性能を語る」から、「時間をデザインする」へ。

まじめであることは、美徳だった。しかし、いまの時代に必要なのは、**“美意識のある誠実さ”**である。

 

Ⅶ.結論


正しければ、売れる。説明すれば、伝わる。誠実なら、選ばれる。

――そのすべてが、もう通用しない。

市場が変わったのではない。人の感性・全体を支配する空気感が変わったのだ。

真面目な工務店が生き残る道は、「正しさ」ではなく、「感じの良さ」を設計すること。

誠実さを残しながら、まじめさを手放す。

そこにしか、次の時代の“ブランド”は、立ち上がらない。


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